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確かに……
私が誰と寝ようと部長には関係ない。
ほんの数秒前に必死に弁解した自分が恥ずかしくなり、部長から顔を背けてエレベーターに乗り込んだ。
平静さを取り戻そうと、部長の一歩後ろで気付かれなように静かに深呼吸をした。
エレベーターの重力に身体の奥が引きずられる。
この感覚はいつになっても好きになれない。
心地の悪いまま階上表示の数字を目で追い、この不安定な感覚から解放されるのを待っていた。
「……あ」
経理室のある七階を通り過ぎた。
「部長、どちらに……」
私が尋ねると同時にふわりと身体が揺れてエレベーターが止まった。
私は戸惑いながらも遅れを取らないように先に降りた部長に続いた。
エレベーターは私が降りるとすぐに扉を閉めて、小さなうねりをあげて行ってしまった。
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