忍び寄る過去-2

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「あら、あなたも来たの?」 考え事をする私をよそに、 森垣さんが開口一番にそう言ったので私は会釈で返事をした。 「居心地はどーお?みんな優しい?」 彼女の顔には何か得体の知れない期待が含まれていた。 『みんな、優しいです。こことは比べものにならないくらい』 と、私は心の中で呟きながら笑顔だけで応えた。 出来ることならこの心の声が伝わって欲しいものだ。 すると、その声が伝わったのか、そうでないのか、彼女はすました顔を部長に戻すと 「徳島部長、15時から承っております。どうぞ」 と、私たちを社長室のドアへ促した。
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