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「ここを利用するのはごく一部の人間だ。特に経理部、営業部、業務部だ。
滅多にないとは思うが君にも今後ここへの出入りを頼むかもしれない。
ここに来る時には必ず俺の社員証が必要だ。俺がそれを渡したということが俺が許可を出したのと同じ意味になる。だからここへの案内だけは俺自身がしている」
「……わかりました」
重々しい説明を受けて私は気を引き締めて頷いた。
「今日はここへは入らない。
何のために入室したのかも記録される。
案内という理由だけでは入れないからな」
「はい、わかりました」
私が真面目に返事をすると、部長がその顔をじっと見つめた。
「やっと、仕事の顔に切り替わったな。戻るぞ、みんなを待たせすぎてる」
「……はい!」
仕事の顔……。
さっきの出来事で気の抜けた顔をしていたのかもしれない。
もしかしたら部長は、
私の気持ちを切り替えるためにエレベーターの行き先を変更したのかもしれない。
「でもここ……。一人で来るのは少し怖いですね」
私は廊下に独り言のような冗談を残して
グレーの扉から離れて部長を追った。
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