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私が言うと、布川さんの「だよな……」という囁きが聞こえた。
『……君にあんな顔させたかったわけじゃないんだ。本当にごめん。
何か、俺焦ってて……みっともないな』
「もういいんです。大丈夫ですから。
徳島部長だって、今頃はもう忘れてるかもしれません」
『あの後……何か言われたりしなかったか?』
「はい、大丈夫です」
再び少しの間が空いた。
『……今夜、これから会えないか?』
すがるような彼の声にわずかに動揺する。
「……すみません。もうお風呂にも入ってしまって……」
私はベッドから立ち上がって部屋をうろうろと歩き始めた。
『……だよな。ごめん。明日はどうかな?』
「すみません。明日は経理部のみんなが歓迎会をしてくれるって言ってて」
こっちの方は嘘じゃない。
ゴールデンウィーク前に冗談半分に話題になっていた私の歓迎会を経理部のメンバーが実際にひらいてくれることになったのだ。
正当な理由があったことに
心なしか安堵している自分がいた。
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