グレーの扉

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「部長、お待たせしました」 私は部長の前にノンアルコールのビールを置いた。 それが一番無難に思えたのだ。 「やっぱり定番ですみません……」と、言い掛けて私はきょとんとしてしまった。 部長の手元には既に新しいグラスが届いていた。 「部長、これ……」 不安になって部長に尋ねると、部長の代わりに宇野さんが返事をした。 「ああ、安藤ちゃんと同じ芋焼酎。部長はロックだって」 「え?」 私は部長と宇野さんを交互に見た。 「ごめん、安藤ちゃん待たずに先に頼んじゃった。もったいないからこのビール、私もらうね」 「あ、ちょっと」 私が止める前に宇野さんは部長の前からグラスを取って、そのまま口を着けてしまった。 「……何これ!?これ、ノンアルじゃない?ちょっと私、店員に文句言ってくる!」
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