グレーの扉

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「宇野さん、待って!」 私が慌てて彼女を引き止めるのと同時に、私の横から部長が彼女をなだめるように言った。 「いいじゃないか。こんなに人がいたら間違いだってある」 「間違いって、客はお金払ってるんですよ、部長!」 「落ち着け。今日は俺が全部持つからいいだろ?」 「え!?いいんですか!?部長!!」 みんなが声をそろえて目を剥(ム)いた。 部長には事前にカンパをもらっている。それだけでも十分なのに、全部なんて部長がいったい何を考えているのか全くわからなかった。 だけど、私の中での問題はそこではない。 焼酎ロックというのはどういうことだろうか? 部長は飲めないはずだ。 みんながはしゃぐ中で私だけが腑に落ちない怪訝な顔で部長を見ると、それに気付いた部長が自分のグラスを小さく揺らし、 「ロックもなかなかイケるぞ」 と、いつもの表情で私にグラスを突き出した。
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