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手にしていたスマホも枕の向こうに放る。
布川さんの声がまだ耳に残っていた。
いつもは用がなくても聞きたいと思っていた彼の声に
今日は身体が重くなったような気さえする。
仕方がない……。
今日の出来事は私にとっては少なからずダメージだった。
なぜそんな風に思うのだろう。
私たちがあたかもそういう関係であるかのような彼の言葉が気に入らなかったのか。
けれど、本来私は彼を慕っているのだ。
言い方はどうであれ、彼からそんな風に想われていることは、実は喜ばしい出来事ではないだろうか。
むしろ、そういう関係になりたいと望んでいたのではないか。
部長はああ言ったけれど、
もしもあれが部長の前ではなく秘書室だったなら、私はちょっとした優越感にでも浸っていたのではないだろうか。
私は枕を抱きしめて身体を丸めた。
こうやって冷静に振り返るとわからなくなる。
残る答えに再び頭が混乱する。
部長の前だから……気に入らなかった?
……いや、それはない。
忘れよう。
私は枕を離して立ち上がると、ぼんやりする頭を抱えてお風呂場へ向かった。
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