グレーの扉-2

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「すみません、床……。何か拭くものを……」 私が床に膝を着くと、部長は「待ってろ」と部屋を出て行き、すぐにタオルを持って戻ってきた。 「すみません」 私がタオルを受け取ろうとすると、部長は自ら屈んで床を拭き始めた。 「部長、私がやります」 私がタオルを掴もうとすると、部長は私と代わる間も与えず濡れた床を拭き取ってしまった。 「……すみません」 すると、部長が笑い出す。 「さっきからそれしか言わないな」 「え?あ……すみません。……あ。」 部長と目が合う。 その目尻が穏やかに下がるのを見て、胸の奥が揺さぶられる。 口元では笑いながら頬は少し緊張していた。 「床より君だ。そのままじゃ風邪を引く」 部長は濡れたタオルを丸めると再び部屋を出て行こうとした。
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