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「じゃあ……お借りします」と、浴室へ行こうとすると、部長が私の背中に念押しした。
「腕をよく洗っとけ」
「……腕?」
そう言われて、見知らぬ男性に腕を掴まれたことを思い出す。
そして、望んでもいないのにその感触までもが肌の表面に蘇った。
私は感触の残る右腕をさすりながら部長にそれとなく探りを入れる。
「あの人は……あの後、どうしたんですか?
何か……言ってました?」
自分の記憶がないのであの後のことが気になった。
「いや、別に」
部長は短く答えただけだった。
それを鵜呑みにしていいのか判断しかね、半信半疑の眼差しで少し待ってみたけれど、部長はそれ以上は何も言わなかった。
あれは、単なるナンパだった……。
ホッとしたのも束の間、私はあるものを目にしてしまった。
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