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部長の下唇の端に小さな赤黒い傷があった。
「嘘……」
初めて見るけれど、これはきっと、殴られて出来る傷だ。
唖然とする私を部長は鼻で笑い飛ばした。
「酔っている以前に頭の悪いヤツだった」
私はそれを聞いてハッとする。
部長の口元からどけた手を再び握って両手の手のひらと甲を交互に見比べた。
すると、部長がその手をひっくり返して私の手を握った。
「……大丈夫だ。俺は手を出してない」
鼓動が徐々に激しくなる。
部長の手が……熱い。
手を握られたままの私は部長との距離を離すことも出来ずに平静を装って部長を見上げた。
「すみません、私のせいで……」
私が傷を見て眉をひそめると、部長は小さなため息をついた。
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