グレーの扉-2

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私は掻き乱された気持ちを落ち着けようと、無理やりにそう納得しようとした。 シャワーを終えて、脱衣所に用意された部長のTシャツとハーフパンツを借りた。 どちらも大きいのでハーフパンツはウェスト部分を折り返した。 そう言えば、着替えももちろん、バスルームから洗面所に至るまで、疑いの余地もないほどに彼女がいる痕跡が見つからない。 私は無意識のうちにそれを探してしまっていたのだろうか。 「ありがとうございました」と、バスルームからリビングに戻った時、部長に言われてしまった。 「……何を探してるんだ?」と。 「え?」 「部屋の中、見回してただろ?」 「いえ……。何時かな……と思って……」 私は自分の視線を誤魔化すようにわざと黒目を大きく動かして時計を探す素振りをした。
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