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「零時半」
部長は私の真正面にある壁掛け時計に目をやって言った。
「……もう、そんな時間なんですね」と、私はその場を取り繕って笑った。
部長は「おかしな奴だな」とでも言いたげだったけれど、それは口にしなかった。
そうするうちに、部長はソファから立ち上がってキッチンに移動すると、冷蔵庫から缶ビールを二本取り出し、そのうちの一本を私に渡した。
私はソファの端に腰を降ろした。
さっきのことがあるのでいつもよりも身体が硬く、ぎこちない。
一方、部長の方は何事もなかったかのように缶を開けて口をつけていた。
「飲まないのか?」
「部長はそんなに飲んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫とは……どういう意味だ?」
「……酒癖……悪いんですよね?」
私はそれとなく指先で唇を隠した。
すると、部長はクスクスと笑い出した。
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