開かれた扉

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私はゆっくりとベッドに横たわった。 肌触りのいいシーツ。 心地良いマットレス。 部長の……匂い……。 もう寝るなんて豪語したけど、 少しも眠くなんかなかった。 寝返りを打つたびに香る慣れない匂いに 寝る前に鎮まるはずの神経が過敏になる。 ついにはこの歳で頭の中で群れを成す羊の数を数え始めた。 結局、半時間ほど過ぎても寝付けなかった私は喉の渇きを覚えてリビングを覗いた。 リビングは静まり返っていた。 物音の代わりに聞こえるのは細い寝息。 私は気配を消しながら足を忍ばせてソファに近付いた。
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