開かれた扉

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ソファに座り、スマホを操作する部長が顔を上げると、すぐに立ち上がって私の方へずんずんと進んで来る。 そして、私の目の前まで来ると、表情一つ変えずに鼻からため息を漏らすと私の眼鏡のフレームの中心部に触れて眼鏡を下方向へ大きくずらした。 眼鏡は私の鼻で留まり、私はそのまま上目遣いになって部長を見た。 「俺の前ではするなと言っただろ」 「もう、帰りますから……」 「まだ俺の前だ」 部長は不機嫌そうに言った。 私はずれた眼鏡を人差し指で元の位置に戻した。 「……お守りみたいなもので、ないと不安になるんです」 私はこの時、部長にほんの少し本心を見せていた。 眼鏡がないと不安になるのは、視力に何らかの問題がある人だ。 左右ともに視力1,5の私には本来ならば不安要素はないけれど、 外してしまうとやっぱり不安なのだ。 もちろんそれは、心理的なものに起因してるのだろうけど。 すると、黙って私を見つめていた部長が口を開く。 「そんなものじゃ守ってもらえないだろ」
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