開かれた扉

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部長の視線はいつもの視線。 お酒を飲んでいないから、 冷たいいつもの目のはずなのに…… 「俺が……この眼鏡を外してやる」 部長はそう言って身体の向きを変えるとスマホと財布を手にした。 「……送ってやる」 「い、いいですよ」 首と手を振る私を部長は呆れたような目つきで見た。 「ここがどこかもわかってないだろ」 「……あ。で、でも、何とかします」 部長は私の言葉を無視して私より先に玄関に向かった。 そして、靴を履いて私を振り返る。 「その酷い顔は、あまり人様にさらさない方がいい」 「……え」 私は慌てて靴を履いて部長を睨む。 「酷い顔で申し訳ありません」 ついでに唇まで尖らせてやった。 それとは対照的に、それを見た部長は鼻から息を漏らして笑うと、「行くぞ」と言ってドアを開けた。
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