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「え、嘘……、そんな……。そうでしたか?」
私は慌ててバッグの中からスマホを探り出し、画面を確認した。
いくらタップしても画面は真っ黒のまま。電源ボタンを操作しても同じ反応しかしなかった。
「すみません、全然気付かなかったです……」
布川さんは渋い顔でため息をもう一つついた。
「でも、だからってそんなに心配していただかなくても……」
すると、布川さんがエレベーター横の壁に私を寄せた。
私の背中にはひんやりとした壁の冷たさが伝わった。
「心配になるのが当然だろ?
好きな女の心配をして何が悪い?」
彼の視線が至近距離から真っ直ぐに私に注がれた。
するとその時、一度動いたエレベーターが再びこの階で止まり、住人が降りてきた。
「……室長、人が来ますから部屋に……」
私は彼を自宅に招いた。
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