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あの時、話の流れから今後の秘書室のあり方について話題が上り、部長は社長に対してまた新たに自分の秘書を探してはどうかと提案したのだ。
それに社長はこう答えていた。
『そんなに簡単に言わないでくれ』と。
そしてその後、こう続けた。
『それに、安藤君を探していたのには、別の理由もあっただろ』と。
それを聞いた部長は言葉を濁してしまったけれど、
……別の理由……
どんな理由があったというのか。
先程から部長は一人静かに缶ビールを口に運んでいる。
それはまるで私に考える時間を与えるような素振りだった。
鼓動はまだ治まっていない。
部長が一体、何をしようとしているのかわからない。
もしかしたら、私は
部長の見えない思惑に踊らされているのかもしれない。
だけど……聞かずにはいられなかった。
今だから……聞けた。
アルコールの力を借りて。
私は手にしていた缶ビールを静かにテーブルに置いた。
「部長は……私の何かを……知ってるんですか?」
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