開かれた扉

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「どういう意味ですか……?」 自信たっぷりの部長の顔に、私はたじたじになって聞き返す。 「そういう意味だ」 私は果敢(カカン)にも、いつも苦手な部長の目をじっと見つめた。 もちろん、これもアルコールの力が成せる業(ワザ)だ。 けれど、さっきから部長の話を聞いていて、全くわけがわからなくなったので、私は白旗を上げると同時に自分も開き直ったのだ。 「部長って……本当によくわからない人ですよね? 全然理解できません。何考えてるのか、さっぱり」 私は少し息を荒げながらテーブルの上の飲みかけの缶ビールに手を伸ばした。 酔っているからと言って、怖いもの知らずにもほどがある。 もしも、素面(シラフ)の自分がこれを聞いたらきっと卒倒しているだろう。 それに対して、部長は面白そうにクスクスと笑った。 「俺は自分を誰かに理解してもらおうとは思ってないが、そんなにはっきりと言われたのは初めてだ」
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