開かれた扉

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「部長に言える人なんてそうそういませんよ。部長、友達いるんですか?」 もう、口にもブレーキがかからなくなっていた。 私は缶に残っていた少しぬるくなりかけたビールを一気に飲み干した。 「鋭いな、ほとんどいない」 「鋭くなくてもわかります」 「じゃあ、君はいるのか?」 「わ、私も少ないですけど……。私の場合は今から増えるんです!経理部のみなさんには仲良くしてもらってますし」 「ああ、そうだな。俺ともこんなに仲がいい」 「は?はい!?どこが仲がいいんですか!!」 「一晩一緒に過ごす仲だぞ?」 「そ、それは成り行きです!成り行き!!」 「照れなくてもいい」 「照れてません!」 部長と話しているうちに息が上がってきた。 今日の部長はどこまでも私の調子を狂わせる。 「部長、私、もう寝ます!」 「一緒に寝るか?」 「寝ません!!」 「威張るな、俺の家だぞ」 私は荒い鼻息だけを吐き出した。 「……冗談だ。俺のベッドで寝ろ。俺はもう少し飲んでここで寝る」
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