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「どうだろうね?偶然だよ」
私はその軽率な言葉に苛つきながら宇野さんから顔を背けて小声で怒鳴った。
「早く復旧してください!そちらで簡単に出来るんでしょう?データが止まるとこちらでは仕事が進まないんですよ?」
「……だから、君が来たら復旧するって言ってるんじゃん。どうする?このままみんなに迷惑かけとく?
君のせいでみんなが仕事出来ないね?」
「そんな……」
「部長の社員証がなくても平気だから。俺が出入りするときは一人だろ?ちゃんと解除法があるんだよ」
彼は私が思うところと全く別のことを説明した。
私はそれを半分聞き流して壁に掛かる時計を見た。
今日は一時間の残業で、もう残すところ二十分だ。
「今日は六時半で終わりになりますから、明日、部長がいらっしゃるときに……」
「君、ヒトの話、聞いてるの?俺はアイツが嫌いだって言っただろ?今日、君が来ないなら明日も明後日もエラーで仕事が止まるよ?支払い前で大変なんじゃない?」
私の言葉を遮って、彼は電話口で苛立つ様子を露わにした。
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