過去から来た男

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頭の中に過去と現実が入り混じる。 片手で額を覆うと、その手が小刻みに震えている。 「どうしよう……」 私はエレベーターが止まるまで、同じ言葉を何度唱えただろう。 答えのみつからないまま七階に着いてしまった。 支払いの準備が立て込んでいる今、私情で時間を無駄にするわけにもいかない。 私は無理やりに深呼吸を繰り返してそのまま経理室に向かった。 「……遅くなってすみません。データ、いただいてきました」 部長のデスクで報告をする。口が上手く回っていないような気がした。 私が部長にメモリを差し出すと部長は私の顔を黙って見上げた。 差し出した手が自分の目の前でまだ震えていた。 部長が手を出す前に、私はそれに気付かれないように慌ててメモリをデスクの上に置いて手を引っ込めた。 「……か、確認お願いします」 俯いた顔はそのままお辞儀にして誤魔化した。
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