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そして、身体の向きを変えて自分の席へ戻ろうとすると、部長が私を呼び止めた。
「……はい」
返事をしたものの、ビクリと跳ねた身体がスムーズに動かない。
ぎしぎしと音を立てて振り返ると、
部長は「社員証を」と、短く言った。
「あ、すみません」
私は首からストラップの紐を外して胸元で重なる社員証の内の一枚を部長に差し出した。
「……ありがとうございました」
すると、今度はすぐに部長の手が伸びてくる。
私の指先が部長の手に触れる。
すると、部長が受け取った社員証を首に掛けながら
「安藤君、紅茶をくれないか?」と、言った。
部長から欲しいと言われてたのは初めてで面喰う。
それを聞いていた他の社員も驚いた様子で部長を見ていた。
「……わかりました」
私は頷いて給湯スペースへ入った。
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