過去との対峙

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人気のなくなった廊下を呼吸するみたいに、ただ何も考えずに歩を進めた。 何かを考えてしまっては立ち止まってしまいそうだったから。 エレベーターホールで下矢印を押して待つ。 自分が逃げ出してしまわないように自分の左手で右の手首を強く握った。 そのうちにエレベーターが到着し、俯いたまま乗り込んだ。 中は仕事を終えて帰宅する社員で半分ほど埋まっていた。 端に寄ってその存在を隠すように息を潜めていると、次の階で再びエレベーターが止まり、残りのスペースに数人を取り込んだ。 「あれ?安藤君」 その中に布川室長が紛れていた。 驚いて顔を上げると、室長の他にも様々な部署の部長クラスの役職の面々が乗っていた。 全体会議は六階の大会議室で行われたはずだ。 となると、会議が終わったということだろうか。
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