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その時私は思ったのだ。
いつも彼女はどんな気持ちでドアの前に立っているのか、と。
家族のためと覚悟を決めた彼女でさえも、毎度、私と同じように恐怖に後ずさったのではないだろうか。
「あの、本人が急に体調を崩してしまって、来られなくなったんですけど、お客さんと連絡が取れずに……だから、私が伝言をお伝えするために直接来させていただきました。
彼女は無責任にドタキャンするような子じゃないんです。
今日はホントに体調が悪くて、私が彼女にやめるように言ったんです。
本人も来られないこと、本当に申し訳ないって言ってましたので……あの、わかって頂けたらと……」
言っている先から手のひらに変な汗をかいた。
私は握りしめていたジーンズの表面でその汗を拭った。
けれど、彼女の言った「サービスする」という言葉は最後まで言うことが出来なかった。
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