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慣れたように部屋の奥へ進む彼に対して、私はじれったくなるほど小さな歩幅で進み、ユニットバスのドアの前ほどで佇んでいた。
部屋の中にはベッドが一台。
壁際のドレッサーの台には高級そうな黒いカメラが置いてあった。
「座りなよ」
彼が勧めたのはベッドだった。
彼がドレッサーの椅子に座ってしまったので、私にはそこしか掛けられる場所がない。
けれど、私の足はなかなかそこへは進まなかった。
沈黙が広がる中で私が考えていたことと言えば、
『彼女ならどうするだろうか』
ということだった。
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