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中途半端な気持ちのそれは単に「客」を喜ばせただけだった。
そして、私には後悔しか残さなかった。
しばらくの間、シャッター音の合間に聞こえる彼の息遣いが耳に残って離れず、
それに錯乱した私は同時に湧き上がる後悔に耐え切れず、翌週から決まっていた仕事を自らキャンセルすることになった。
それが……
私にとっての空白の一ヶ月になったのだ。
彼も昔を思い出しているのか不敵な笑みを浮かべている。
見るに堪えなくなって顔を背けた時だった。
部屋の中にプ、プーと無線のような音がする。
それがインターホンの音だと気付くのに時間は掛からなかった。
「誰だよ、こんな時間に?定時過ぎてんだろ」
彼が舌打ちをしている間にしばらく鳴っていたインターホンと思われる音は鳴り止んだ。
彼はそのことに違和感を覚えたのか首を捻りながら「見てくる」と言い残すと、カメラを置いてドアへ向かった。
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