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「そうか……。定時を過ぎてるけど、開けてもらえるのか?」
「あ……はい。行く旨は連絡してあるので」
そんな会話の途中でエレベーターは三階に到着した。
「じゃあ、お疲れさまです」
私が小声で言うと、布川さんは「お疲れ」と、閉まるドアの向こうで笑顔を見せた。
その笑顔を見て私は心を一段と沈ませる。
自分が大切だと思っていた人全部を裏切るような気がしたからだ。
三階はいつ来てもどこか鬱蒼とした空気が漂っている。
単に私の気の持ちようだろうけど、どうすることもできなかった。
天気は昨日から続く鬱陶しい雨で、雨音だけが廊下に響いていた。
廊下の角を曲がり、いつもの直線。
進めば進むほど暗くなる廊下は
まるでこの先に広がる私の未来のようだった。
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