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ドアの前でどれくらい立ち尽くしていただろうか。
前回押したインターホンになかなか指が伸ばせない。
一度この扉を開いてしまったら
きっと、一度や二度では終わらない。
わかってはいるけれど、
それが私が後悔し続けた過去の代償ならば、仕方がない。
それで今の私の居場所を守れるなら、それでいいのかもしれない。
ずっと、繋ぎ合わせで来た私が正社員にしてもらい、
こんな私を経理部ではあたたかく迎えてくれた。
そんなみんなには迷惑を掛けたくなかったし、
彼女たちの輪の中にいたかった。
私はインターホンのボタンに人差し指で触れた。
前回とは違う工程で扉がゆっくりと開き、
彼が私を中に招き入れる。
私はその時、
遠くから響いてくる足音に
気付いてはいなかった。
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