712人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅かったね。もう来ないかと思ったよ」
彼は私に背を向けて言うと、ゆっくりと振り返った。
「でも、来ないわけにいかないよね?」
私は何とか平静を保とうとしたものの引き攣る顔の神経までは
自分ではどうすることも出来なかった。
「あの、先にデータの復旧とエラーになってた分のデータいただけますか?前回の入室記録も記入しますから」
ぼんやりとしながらも淡々と話す自分に驚いた。
すると、彼はわざとらしく大きなため息をついた。
「そんなに焦らなくてもいいだろ?
そうだ。今日はいいものを持って来たんだよ」
……いいもの……?
私は心の中で聞き返しながら、眉間に思い切り皺を寄せた。
すると、彼はデスクの引き出しからA4よりも一回り小さい茶封筒を取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!