眼鏡の向こう

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部長は今に限らず、 ずっと私を真っ直ぐに見ていてくれた。 それが私の秘密を見透かすようだと私はずっと思っていたけれど、 そうじゃなかった。 部長はいつだって、 どんな私でも変わらない目で見続けてくれていたのだ。 もしかすると、自分の過去を隠そうとし続けた私のこの眼鏡のせいで 私自身が何かを歪んだカタチで見つめてきたのかもしれない。 だから、気付かなかったのだ。 部長の…… ……優しい目に。 私の過去を知ったこの直後でさえ、部長の目の色は以前と少しも変わっていない。 今までと同じ、 冷たくて…… ……優しい目をしてる。
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