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その目が私の崩れそうになる心をしっかりと抱きしめて、奮い立たせた。
「私はもう……過去になんて怯えない。
それをどうにかしたいなら……どうにでもして。
それはあなたのものだから。
でも……今の私はあなたのものじゃない」
今度は彼に真っ直ぐな視線を向けた。
わかってもらおうとは思わないけれど、せめて伝わって欲しいと思った。
私はしばらく彼に視線を留めた後、ゆっくりと部長を見上げた。
伝えたいのは……
彼だけじゃなかったからだ。
部長は私の視線を受け止めると、安堵にも似た表情を浮かべ、決して大きくはない声で言ってくれた。
「賢明な判断だ」と。
私はこの言葉を幾度となく聞いてきた。
だから、私は知っている。
部長がこう言ってくれるのは正しい判断をしたとき。
部長のその言葉で
私は
自分が間違っていないと……
……確信できた。
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