眼鏡の向こう

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「……終わりだ」 部長の言葉は今度こそ全てを終わらせるものになった。 「待てよ……」 けれど、彼はまだかすれた声で抵抗を試みる。 「……言っておくが、今回、君のしたことは懲戒処分に等しい。 俺が一言発すれば、君はクビだ。俺は社内においてはそういう立場にある」 彼はそこで強張った顔を上げた。 「……クビ?」 部長はその顔を見おろしながら続けた。 「君をクビにするのは簡単だ。しかし、それでは俺も自分の立場を利用したことになる。……君のようにな」 私と彼はその言葉の意味をどう受け取っていいのかわからずにいた。 「今の俺なら自分の立場でも発言力でも利用できるものは何でも利用して、君を彼女から遠ざけることもできる。 だが、入室許可もなしにここに来たのは彼女だ。君の故意によるものだったとしても、彼女はシステム上の不具合の件も俺に報告していない。悪いのは彼女自身だ。 そして、その責任は上司である俺にある」
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