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私は……
部長をただじっと見つめていた。
胸が……
いっぱいになった。
「行くぞ」
全てを言い終えた部長は再び私の腕を引いた。
身体が引っ張られたところで今度は私が木戸さんに呼び止められた。
「……忘れもの。もう、持ってても仕方ないみたいだ」
彼は茶封筒に引き出しから出した小さなメモリを放り込んで私に突き出した。
私は黙ってそれを受け取った。
彼は力なく椅子に腰を降ろし、私と部長は薄暗い部屋を出た。
廊下の窓には雨が激しく打ち付けて夜の景色を歪ませていた。
部長は無言のまま私の手を引き、大股で直線を歩いた。
角を曲がり、遠心力で私が外へ弾かれそうになると、
部長がそれを強く引き寄せて私を自分の腕の中にしっかりと納めた。
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