眼鏡の向こう

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「お二人揃って一体どうしたんですか?」 彼は写真の散らばったデスクを背中で隠すように陣取った。 けれど、彼の不自然な動きは彼らに何かがあると示しただけだった。 ……八方塞がり。 人は本当にそういう状況になった時、もがくことも、あがくこともしなくなるんだってことを知った。 部長が彼をどかしてデスクの上の写真を一枚手に取った。 それを見て室長も後に続く。 「何だこれ……」 先に声を漏らしたのは室長だった。 「……どういうことなんだ……」 室長の声色は驚きを通り越して失望を滲ませる。 室長がどんな顔をしてるのか怖くて見ることが出来ない。 自分の過去がさらされた今、 諦めているのに、これが夢なら、と、とんでもないことを思ったりもしている。 「よく撮れてるでしょ?安藤さんですよ。 ……五年前のね」 彼は私の思考を遮り、とどめを刺すように言った。
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