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室長は片手で頭を抱えた。
「こんなの……人違いだ。そうだろ?こんなの俺の知ってる安藤君じゃない」
……こんなの……
室長の言葉が耳に痛い。
「『こんなの』って、布川室長、言いますねえ。そんな言い方したら彼女が傷付くじゃないですか」
彼は私を庇うつもりなど毛頭ない。
ただ、暗い表情の室長とは逆に、愉快そうに笑った。
「……とにかくこれは、彼女なんかじゃない」
室長はまるで汚いものでも扱うように、写真をデスクに放った。
「まあ、そう思いたくなる気持ちはわからなくはないですけど、何なら、本人に聞いてみましょうか。
ねえ、これ、安藤さんだよね?」
唇を噛んだまま俯く私に彼は続けた。
「来られなくなった友達の代わりに来て、俺と会って最初で最後の一回だったらしいです。
だから俺もここで偶然再会して、もしかして、運命かもって思ったくらいです」
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