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そして、彼は私に顔を向けニヤリと笑った。
「データはばら撒いてなんかいない。君の過去を知ってるのは僕だけだったんだよ。
だからもう、カモフラージュなんて意味はない。
その眼鏡、外しなよ?」
彼が私に近付き、眼鏡に触れようとした。
「……やめて!」
私は両手で眼鏡を覆い、身体ごと彼から背けた。
数秒間経って恐る恐る顔を上げると、眼鏡越しに見えた室長の瞳から徐々に正気が失われていく。
彼の全身から漂う失望の色に、私は乾いた唇をようやく開けた。
「……室長。私が室長にふさわしくないと言った理由です。
何の弁解もしません」
「やめろ!やめてくれ!」
室長は私の言葉を遮って声を荒げた。
「認めたら終わりだろ!?お願いだ、違うと言ってくれ!!」
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