眼鏡の向こう

5/25
前へ
/25ページ
次へ
室長は失望の後に怒りを露わにした。 ずっと、私を想ってくれていた室長にとって、私の過去は許しがたい裏切りだったのだろう。 「……室長、がっかりさせて……ごめんなさい」 喉が詰まった。 いつも優しかった彼の瞳は、私を映すことなく遠くを見つめていた。 「信じたくない……。信じられないよ……」 彼がそれほどまでに否定したい私の過去は、それでも事実なのだ。 「もしも……これが事実だったとしても、君が否定してくれたのなら、俺は君を受け入れることが出来るかもしれないのに……」 「そんなことをすれば…… 私はこの先ずっと、室長を苦しめることになります」 そして、私自身も今まで以上に苦しい思いをするだろう。 秘密に嘘を重ねることなど出来なかった。 その時、重い空気を断ち切るように部長が口を開いた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

675人が本棚に入れています
本棚に追加