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室長は失望の後に怒りを露わにした。
ずっと、私を想ってくれていた室長にとって、私の過去は許しがたい裏切りだったのだろう。
「……室長、がっかりさせて……ごめんなさい」
喉が詰まった。
いつも優しかった彼の瞳は、私を映すことなく遠くを見つめていた。
「信じたくない……。信じられないよ……」
彼がそれほどまでに否定したい私の過去は、それでも事実なのだ。
「もしも……これが事実だったとしても、君が否定してくれたのなら、俺は君を受け入れることが出来るかもしれないのに……」
「そんなことをすれば……
私はこの先ずっと、室長を苦しめることになります」
そして、私自身も今まで以上に苦しい思いをするだろう。
秘密に嘘を重ねることなど出来なかった。
その時、重い空気を断ち切るように部長が口を開いた。
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