番外編【私のヒミツ。彼の酒癖】

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私は言葉に詰まってしまった。 ……『違う』と……否定しないのは…… どうしてだろう…… 心の中で自問自答しながらも、最後までそれを否定する言葉は出てこなかった。 「どんな人なの?」 みんなが身を乗り出す。 けれど、さすがにここでは『部長』だとは言えない。 「何やってる人? 歳は? いつから?」 「……普通のサラリーマンですよ……。少し年上で……本当につい最近で……」 ……だから、まだまだ付き合っているという実感が湧かない。 「へえーー!!いいなあ!かっこいい?」 カッコ…… 黒目が宙を彷徨って、 顔にじわりと熱が湧く。 「……普通ですよ」 ……部長……ごめんなさい。 私は心の中で呟きながら小さな小さな嘘をついた。 「安藤ちゃん、照れちゃって可愛いの」 「て、照れてなんか……」 なんて、真っ赤な顔をして言ってもなんの説得力もない。
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