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事務所の入り口で中を覗き込むように立ち止まっていると、 「今日は随分早いな」 背後から声がして声をあげそうになった。 「おは、おはようございます」 私が挨拶をすると、部長は私を追い越して先に事務所に入った。 部長の背中を追うように中に入ると、部長が席に着きながら笑った。 「……寂しくなったのか?」 もちろん、部長がこんなことを口にするのだから室内には二人きりだ。 「そういうわけじゃ……ないんですけど」 素直にそうだと言えたら可愛げもあるのに。 だけど、ここのところ、電話やメールでも十分に話せていない。 部長が忙しそうだったので、こちらからするのを遠慮していたのだ。 「少し……話せたらと思って」 そしてまた、私の右手がこめかみに上がる。 私はそのことを部長に気付かれているとも知らないで、何でもなかったように慌てて手を下ろした。
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