692人が本棚に入れています
本棚に追加
二人きりのオフィスで……キス……。
けれど、私の妄想通りにはいかない。
部長が気にしているのは、私よりも紅茶の方だった。
私は思い切って口を開いた。
「部長……。
今日の飲み会の後……二人で……飲み直しって……アリですか?」
すると、部長は薄らと笑って、
「君がそうしたいなら」
と、短く返事をした。
それじゃあ、私だけが望んでいるみたいだ。
部長は……?
私が口を開きかけると、私ではない声が事務所に響く。
「おはようございます。……あれ?安藤さん、今日は早いね」
みんなより一足早く出社してきた山口さんだった。
「おはようございます」
私が返事をすると、部長が「山口君にも入れてやってくれ」と、言い置いて席に戻ってしまった。
二人だけの時間はあっという間に終わってしまった。
「わかりました」
私は返事をすると、二人分準備していた紅茶を部長と山口さんに入れ、自分はみんなのデスクを拭くために布巾を手にした。
最初のコメントを投稿しよう!