あてがわれた婚約者

12/15
前へ
/30ページ
次へ
婚約をして結納までは済ませたが、私が学生だからと結婚式は挙げないこととなった。 それにはひどく、ホッとした。 愛がないのに、神様の前で誓えない。 きっとこれからも挙げることはないだろう。 「葉月、しっかりね。いつでも帰ってきていいのよ」 大学が始まる一日前に、私は彼と同居する事になった。 母の優しい言葉に泣きそうになるも、我慢する。 本当なら、行きたくないと泣きつきたい。 しかしそれはできないから、「はい、お母様」と、無理矢理に笑った。 彼の父親が購入してくれた私たちの済むマンションは、きっとお金持ちなだけに、いい部屋なのだろう。 しかし、私は少しも楽しみじゃない。 あの冷たい人とこれから私は過ごさなければならない。 あと何十年と共にするんだと思うと、泣きそうになる。 「参りましょうか、葉月様」 「お願いします……」 今日だって冷たい彼は来てくれない。 来てくれているのは運転手だけだ。 今から牢獄へ送られる。 そんな気分だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21477人が本棚に入れています
本棚に追加