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婚約をして結納までは済ませたが、私が学生だからと結婚式は挙げないこととなった。
それにはひどく、ホッとした。
愛がないのに、神様の前で誓えない。
きっとこれからも挙げることはないだろう。
「葉月、しっかりね。いつでも帰ってきていいのよ」
大学が始まる一日前に、私は彼と同居する事になった。
母の優しい言葉に泣きそうになるも、我慢する。
本当なら、行きたくないと泣きつきたい。
しかしそれはできないから、「はい、お母様」と、無理矢理に笑った。
彼の父親が購入してくれた私たちの済むマンションは、きっとお金持ちなだけに、いい部屋なのだろう。
しかし、私は少しも楽しみじゃない。
あの冷たい人とこれから私は過ごさなければならない。
あと何十年と共にするんだと思うと、泣きそうになる。
「参りましょうか、葉月様」
「お願いします……」
今日だって冷たい彼は来てくれない。
来てくれているのは運転手だけだ。
今から牢獄へ送られる。
そんな気分だった。
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