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どうか着かないで、と願ったものの、簡単に時間は過ぎる。
気がつくと、もうマンションの前だった。
「葉月様お荷物は持ちしますから先にどうぞ」
「ありがとうございます」
私は嫌な気持ちを抑えて、車を降りた。
事前に聞いていたオートロックを解除し、中へ入る。
住まいは最上階である。
交通の便のいいこの場所は、きっと高かったに違いない。
エレベーターを降り、ワンフロアに一室しかない部屋を開け、中に入る。
そこにはもう、家具やカーテンや家電、それに雑貨類も全て揃っていた。
なんともお洒落で、まるでモデルルームのようだ。
私の部屋はどこだろうと思ったとき、後ろから声がかかった。
聞き覚えのある、低い声は振り向かなくてもわかる。
「お前の部屋はここだ」
それは今日は仕事だったと聞いていた彼だった。
「家具は適当に揃えたが、足りないものがあればこれを使え」
「え……」
彼は、私の部屋を指すと、私の前まで来た。
身体が緊張で震えるがすぐ、ブラックカードを差し出された。
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