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それに何も言えないでいる私に彼はまた苛立ったような声を出す。
「早く受け取れ」
「え、あっはい」
消え入りそうな声が自分から出る。
怖くてしかたがなかった。
「それと明日から家政婦がくるから」
「はい……」
「俺は食事は滅多にここで取らない。
俺のことは気にせずお前のペースで生活しろ」
「わかりました……」
これから私達は仮面夫婦となるのだ。
恋もしたことのない私の結婚相手は、ひどく冷たい人で、浮気を推進するような人。
きっと小心者の私にはそんな、不真面目な事ができるはずがないし、なにより道理に反した行動を取りたいと思わない。
しかし、彼は違うのだろう。
胸が、苦しい。
「俺の部屋には入るなよ」
「はい」
彼は冷たくそれだけ言うと自身の部屋なのだろう、一つの部屋に入ると、ドアを強く閉めた。
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