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翌朝、目が覚めると、もう蓮池さんは家にいない。
彼は仕事なのだろう。
気になるのは、彼の優しい行動を思い出したからだろう。
まだ数日しか経ってないが、寂しい生活が続くのだろうかと思うと、胸が苦しくなる。
本当は嫌な人じゃないのかもしれないと、思うがまだわからない。
だって、嫌な人ならほっとくと思う。
昨日の彼の行動は、私の心を少し変えたのかもしれない。
政略結婚だけどこのままでいていいのだろうか。
「宮前さん、あの……」
私が声をかけたのに、驚いたのか、彼女は「はい」と、表情を緩めた。
「お夕食を今夜から私が作っても、いいですか?」
すると、彼女は目を丸くして「え、奥様が?」と、言った。
「はい」
少し優しくされただけだが、夕食を作ることで、蓮池さんと、距離が縮められないだろうかと、思ったのだ。
このまま何もしないで寂しいまま終わるより、何かしてみたほうがいい。
小さな決意が生まれた朝だった。
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