あてがわれた婚約者

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彼の後に続き黙ったまま庭に出た。 柔らかな花の匂いが鼻腔をくすぐるのにやや気が逸れる。 しかし黙ったままの少し前の男に緊張は解れない。 暫く歩けば彼が私を振り返った。 冷たい目が私を見据える。 ぞくっとするようなそれに身体を縮こませれば形のいい唇を少し開けた。 「お前は納得してるのか?」 何の事かと首を僅かに傾ければ、いらっとしたような彼の表情にまた緊張する。 「この結婚に」 この結婚に納得しているわけがない。 無理矢理させられたものなのだから。 「はい……」 私はうつむいて、そう返せば彼にこちらに距離を縮められた。 私は、はっとし顔を上げると変わらず冷たいその表情が近くにあってドキッとする。 「大学は行けばいい。 フルートがしたいならサークルでも入って好きなだけすればいい。 学生の身だから家政婦を雇うから家事もしなくていい」 フルートに、大学、私の気にしていたものは諦めなくていいのだろうか。 まさかのありがたい言葉に驚いて目を瞬かせる。
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