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再びインターホンが鳴ったのは連休明けのことだった。
田中さんはこの連休を使ってどうやら旅行に行ってきたらしい。僕はチェーンを付けたまま恐る恐る彼を見やる。
「この連休、すごく海が綺麗なところに行ってきたので!お土産です」
またも紙袋を手渡される。僕も行ったことのある場所だ…というより地元だ。
「…どこに…行ってきたんです?」
「ちょっと聖地巡りに!」
あはは、と頭を掻く田中さん。
聖地。海が綺麗な僕の地元が、聖地。何の聖地だ。
「すっごくマイナーな聖地なんですけどね」
マイナーな聖地とは一体。
「そのお土産、とても美味しいのでおすすめですよ…えーと…隣人さん」
ではまた、と彼はまたも僕の名前を知ることなく自分の部屋に戻って行った。
そろそろ表札を付けることを検討するべきだと気付いた。
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