隣の田中さん

8/13
前へ
/13ページ
次へ
「え!?トモザキ先生のことご存知なんですか!!!!?」 なんというテンションの上がりようだろう。 「…え?え、えぇ…はい」 「わあ!嬉しいな!それでトモザキ先生がどうしたんですか!?」 とても嬉しそうな彼に、まさか本人だとは言えまい。 「…あ、あの」 「はい?」 「家に上がらせてもらっても、…いいですか?」 「はい、どうぞどうぞ」 彼は引き入れるように手のひらで家の中を示しながら、僕の腕を軽く掴む。 「あ、ありがとうございま――」 若干引っ張られながら、感謝を告げている間に、あっという間に居間に到着する。音楽が響く、シンプルな部屋。クローゼットとちゃぶ台タイプのテーブル、綿が少なめの座布団。ハンガーに掛けられたスーツ。CDプレイヤー。ちょっといいやつ。 それから――ひたすら異彩を放つ、本棚。そのほぼすべてに書かれた『トモザキケンリ』の文字。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加