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「あ、やっぱりびっくりしました?」
驚いて立ち尽くす僕に、田中さんは「やっぱり」という顔で笑っていた。
「え、あ」
「でも、俺、すっごい好きなんですよ!トモザキケンリ先生の作品が!」
言葉の節々から溢れる、「好き」。本当に、好きなのだろう。本棚をよく見てみると、雑誌も何冊かある。それも僕が依頼されて書いた短文エッセイが載っていたり、半ページだけ特集が組まれていたものまでだ。よくもまあ、手に入れたものだ。
「今流れている音楽も彼が好きだって言っていたバンドの音楽でしてね。実は前に言った『聖地』っていうのも彼の作品の舞台になった場所のことなんですけど」
なるほど、僕の好きな音楽が流れていたのはそういう理由だったのか。というかそんなこと言ったことがあったっけ?
「それで――そんなトモザキケンリ先生がどうかしたんですか?」
テンションが上がるのを抑えつけるように咳払いをひとつして、田中さんは僕に尋ねた。
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