第1章

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※※※※仲山教官※※※※ やっとクランク終わったよ……いや、まだか? まあ良い。 まだ期間もあるし、この先つまづく方が面倒くさいからな。 妙な疲れが体を襲っている。 尻も痛いし腰もダルイ。 とりあえず次のコマまでにコーヒーでも飲んでリセットするか? 体をバキバキと捻りながら、教官室を目指す。 ロビーの待合室で今さっき隣で怯えていたクランクの田中が、楽しそうにスマホを弄っていた。 こいつ帰らないのか? 運転中の泣きそうな顔と、今の楽しそうな顔とのギャップが大きくて、こっちが微妙な気持ちにさせらせる。 いや、コーヒー、コーヒー。 おや?膝も痛い? 気のせい、気のせい。 教官室のサーバーからコーヒーを注ぐと、温かい湯気と共に煮立て過ぎたコーヒーの香りが鼻腔をつく。 残り5分。 「仲山先生?コーヒーなんて珍しいですね。」 やって来たのは、色気ムンムンの事務員。 なんでも事務員は学生にモテるんだとかで、常に胸元を強調した服を着ている。 「仲山先生は今日はラストまで入ってますよね? 終わったら一緒に軽く飲みません?」 「いや、俺、車なんで」 「ウフフ、車なんて……」 「じゃあ、次のコマ始まるんでこれで。」 俺は無理矢理話を終わらせて、飲み足りないコーヒーをゴミ箱に突っ込むと、逃げるように車に向かった。 ダメだ。あの事務員の香水が鼻につく。 それにしても、「車なんて」って何言おうとしたんだ?あの女。 まだロビーにはクランク田中が座っているし……お前はもう帰れ! 理不尽な苛立ちを抱えながら、次の生徒のチェックをする。 ああ、スピード狂の問題坊主か。 右足は……うん、元気だ。 ブレーキオイルの点検だけしておくか? この教習所は妙なトリックを使うらしく、問題生徒には俺が当たる確率が高い。 何でも予約の時に「この生徒は嫌。」ってのを拒否できるし、「卒業が難しい生徒」は優先して予約できるし…… まあ、経営の何タラってやつだ。 その経営の何タラの犠牲になったのが俺。 マジムカつく生徒ばかりで、新人教官なら辞めている所だろう。 あ、来た来た、あのブレーキしらず。 始めにガツンと言って、調子に乗らせない様にしないと…… にこやかな笑顔で挨拶して、ルール通りに名前確認。 よし、また頑張ります!
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