カーナビ

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カーナビ

 友人がついに新車を買ったということで、休みの日に乗せてもらった。  そこまで高値ではないが、今までがかなりオンボロの中古車だったせいか、とにもかくにも大はしゃぎだった。  中でも嬉しそうだったのがカーナビの存在で、前はボロすぎて後付けすることすらためらわれたし、そこに金をつぎ込むなら、新車の足しにと我慢していたから、これでようやくあちこち遠出ができると語っていた。  そうかそうかと聞きながら、男二人で色気のないドライブだけど、新車に慣れる意味も含めて、十キロばかり離れたショッピングモールにでも行こうということになった。  音声認識ナビに場所を告げると、画面表示と音声ガイダンスでルートが指示される。  それが、途中で何故か、まるで違う画面に切り変わった。  一応市内ではあるが、俺の家とも友人の家とも相手の勤め先付近とも違う場所が示され、その一部分で赤いマークが点滅する。  新車に替えたばかりなのに、もう故障してるのか?  そう思い、友人に問うたら、目的地への最短ルートを探す際、渋滞事情なども検索してくれるらしく、その過程で一瞬だけ、関係のない地図が表示されることもあるらしいと説明してくれた。  実際、すぐに画面は元に戻り、その後は渋滞にはまることのない快適なルートを通れたので、そんなものかと納得した。  それから約半年後。  友人が交通事故で亡くなった。  その、事故現場の町名に覚えがあった。  あの日、友人のカーナビに映し出された見知らぬ土地。市内でも読み辛い類の町名だったから、一瞬のことでもはっきりと覚えていたのだ。  どうしようもなく気になり、聞いた事故現場の場所を地図で調べると、こっちの記憶はおぼろげだったが、どうやらそれは、あの日、目的地のマークが点滅していた地点のようだった。  半年も前にカーナビに映し出された、友人が事故死した場所の位置。  友人の死は偶然のものなのか。それとも、何か得体の知れない力が引き起こしたものなのか。  知りたくても、事故の衝撃で潰れ、壊れて廃車と共に回収されてしまったカーナビが、それを俺に教えてくれることはないだろう。 カーナビ…完
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